ウルトラテックV5の開封・セッティング方法

ウルトラテック社のファセットマシン「V5」のセッティング方法を紹介します。
英語のマニュアルはスマホの翻訳機能でも大体理解できますが
初めてセッティングする人にはそれだけではおそらく難しいです。
ここでは新しい研磨盤の事前準備(チャージング)もあわせて紹介します。

ファセットマシンV5の梱包と納期

V5はファセットマシンのベースとなる本体部分と付属品がパーツに分かれて海外から配送されます。
その他のオプションや研磨盤等も購入すると大きめの段ボール3個位で届きます。
注文から到着まではおよそ3か月。発送通知から1週間くらいで届きますが発送までの時間がかかります。

開封して段ボールから出した状態

1,ベース(本体)
ベースの表側には回転盤のスイッチ、裏側(内部)にはモーターが内臓されています。
左側のシルバーの丸い回転台に研磨盤を装着します。
※本体の電源コンセントは3ピンタイプ。3ピンが挿せる電源タップか、2ピン変換アダプタを事前に用意しましょう。

ウルトラテックV5 ultratec ファセットマシン

2,ゴム製ホイールカバーと排水ホース
研磨盤を回した際に水が飛び散るのを抑えます。
カバーには排水をホースに送り込むための穴があり、ベース側の穴に合わせるようにセットします。
※カバーはゴム臭が強いので苦手な方は使わないときは外してしまっておくのが良いと思います。
(画像では見づらいですがカバーの中に透明の排水ホースが写っています)

ウルトラテックV5 ultratec ファセットマシン カバー

3,ドリップタンク
研磨盤に水を滴下するためのタンク。支柱とノズルを接続します。
※画像はタンクと支柱。

ウルトラテックV5 ultratec ファセットマシン タンク支柱

4,ファセッター
石を固定し、高さと角度を調整するためのファセットマシンの重要パーツです。
角度計はデジタル表示のものとアナログのものを購入時に選択できます。
画像はデジタル式です。別途、角度計の電源アダプタが付属されています。

ウルトラテックV5 ultratec ファセットマシン ファセッター

5,ライト(オプション品)
石が研磨できているかを確認する時に使います。質の高い研磨をするにはライトは必須です。
このライトはベースに固定できるので他のライトを使うより便利です。※電球は付属していません。

ウルトラテックV5 ultratec ファセットマシン ライト

これらを組み上げると下のようになります。
初めに排水ホースを本体の裏側から差し込んで接続します。
それ以外のパーツも接続箇所に装着して固定するだけなのでとても簡単です。

ウルトラテックV5の付属品とオプション品

上記の本体以外に多くの付属品やオプションで購入する研磨盤があります。
代表的なものを紹介します。

1,ドップ棒(付属品)
研磨する石を固定するための金属の棒です。
ドップ棒はファセッターに決まった角度で装着できるように斜めに切れ込みが入っています。
棒のサイズ・形状も複数あります。
付属のドップ棒以外にサイズ違いを追加購入しておくと便利です。

2,トランスファーブロック(付属品)
ファセット研磨する手順に表側(クラウン)と裏側(パビリオン)の研磨があります。
パビリオン側を研磨した後にドップ棒を正確に反対側に付け替える必要があります。
そのためのツールがトランスファーです。

3,インデックスギア(付属品)
インデックスギアには角度の目盛りが付いています。
カットしたいレシピの角度に合わせて正確に研磨するためのパーツです。
付属しているのは「96(360度を96分割した目盛り)」のギアで、
オプション品で64、72、80、120などがあります。
※公開されているファセットカットのレシピの多くは96が使われています。

3,テーブル用アダプタ(付属品)
ファセットカットのクラウンのテーブル(一番上の平らな面)を研磨する際に必要です。
研磨盤に対して垂直に石を当てるためのものです。

4,研磨盤と研磨剤(どちらもオプション品)
ウルトラテックV5本体には研磨盤(研磨ラップ)は付属していません。
研磨盤は用途や研磨の仕方によって使うものが違うので研磨したいものに合わせて購入します
本体購入時にオプション購入するか、他社サイトでも購入できます。
日本のネットショップでは取り扱いが少なく、種類によっては海外サイトで購入する必要があります。
詳しくは以下で紹介します。

これらの他に水はね防止のスポンジやネジを締めるレンチ、調整パーツなどが付属しています。
他に必須なものとして、石をドップ棒に付ける接着剤またはドッピングワックス、
ドップ棒から石を外すためのアルコールランプ(バーナー)などがあります。
石に付着して接着剤を溶かすためにはアセトンも必要です。

研磨盤と研磨剤について

ファセット研磨では原石から研磨していく段階に合わせて研磨盤と研磨剤を変えながら研磨します。
おもな研磨盤は以下のものが必要です。
(これは一例です。目的に合わせて研磨剤の粒度や工程が異なることがあります)

1,プレフォーミング
2,本研磨
3,プレポリッシュ(仕上げの前段階)
4,ポリッシング(最終仕上げ・光沢出し)

◆プレフォーミング:形成用ダイヤモンドラップ+マスターラップ
ダイヤモンドラップはダイヤモンド粒子が電着された研磨盤です。
形成には#200前後のものを使用します。
ダイヤモンドラップは薄型のため、研磨台に安定させるために土台となるマスターラップ(アルミニウム)の上に重ねて装着します。ラフな原石から作りたいファセットカットのレシピに合わせて形成します。この段階での石の研磨面は擦りガラスのような白い状態です。

◆本研磨:銅ラップ&ダイヤモンドパウダー#600
銅ラップはそのままではただの金属盤で研磨する力はありません。
研磨剤(ここではダイヤモンドパウダー#600)を盤に擦り込むことで研磨力を発揮します。
※研磨剤の使用方法(チャージング)は後述します。
本研磨では形成した石をさらに整えながら研磨します。

銅ラップを使わずに前述のダイヤモンドラップの#600や#1200で行うこともできます。

◆プレポリッシュ(予備研磨):TINラップ+ダイヤモンドパウダー#3000
「プレ」は「予備」という意味。プレポリッシュは次のポリッシュのための予備研磨ということです。
この時点で擦りガラス状から透明になってきます。石の内部も見えるようになります。
「TIN」ラップは「錫(スズ)」のラップで適度な硬さでプレポリッシュに向いています。

◆ポリッシュ(仕上げ研磨):BATTラップ+ダイヤモンドパウダー#60000
光沢が出て綺麗に研磨できたら完成です。
もし傷があったり、磨ききれていない場合は前に戻って研磨し直します。
「BATTラップ」は錫を含む4種の金属の合金ラップです。

このほかにも酸化セリウムを含んだ研磨ラップやフィルムに研磨剤を埋め込んだウルトララップなどもあります。
研磨の仕方は石や持っている道具に合わせてやり方が変わります。
人によってもやり方が異なり、プロでも日々新しいカットを試行錯誤しながら研磨しています。

研磨盤のチャージング方法

「銅ラップ」「TINラップ」「BATTラップ」はそれ単体には研磨力はありません。
ダイヤモンドパウダーやペーストなどの研磨剤を擦り込んで研磨できる状態にする必要があります。

銅ラップ チャージング前

研磨盤・研磨剤のチャージング方法

以下では銅ラップ&ダイヤモンドパウダー#600でのチャージング方法を紹介します。
他のラップでも基本的な方法は同じです。

1,銅ラップを綺麗に拭く
V5に銅ラップを装着して低速で回しながらキッチンペーパーなどで表面を軽く拭きます。

2,銅ラップにベビーオイルを塗る
専用オイルもありますがベビーオイルでも代用できます。
※オイルはノンシリコンのものを使用します。
ベビーオイルをキッチンペーパーに取り、低速で回しながらラップ全体に塗り延ばします。

3,ダイヤモンドパウダー#600を銅ラップに付けて塗り延ばす。
ダイヤモンドパウダーを指先に取ったら一度回転を止めて点々とラップに付けます。
※初めてチャージングする場合は多めに付けてもOK。

ダイヤモンドパウダーを指先に付ける
銅ラップに点々と付ける

4,満遍なく付けたら低速で回して指で塗り延ばします。
さらにコランダムなどの固めの石の平面部分で軽く押し付ける。
適切な石がない場合には下のように不要なクレジットカードなどプラスティックでも可能です。
この一連の作業でダイヤモンド粒子が銅ラップの中に入り込んで研磨力が生まれます。

最後に回転させながらキッチンペーパーで余分な油分とダイヤモンドパウダーを拭き取ります。
研磨力が落ちてきたら同じ工程を行います。
銅ラップ以外のTINラップやBATTラップもやり方は同じです。

【注意!】
既に使用している研磨盤と研磨剤の組み合わせを間違えると
正しく研磨できなくなるので気を付けましょう。
例えば、ダイヤモンドパウダー#600を使用している研磨盤に
それよりも粒度が小さい#3000を使用しても
荒い#600の粒子が残っているため#3000として研磨することはできません。

ウルトラテックV5のセッティングは以上です。
実際にファセットカット研磨する方法はまた紹介します。

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